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シリーズ「女性活躍」
~女性が活躍する構成員会社の紹介~
シリーズ「女性活躍」
~女性が活躍する
構成員会社の紹介~

事例に学ぶ①稲垣鉄工(三重)・前編
2021年3月22日号15面

事例に学ぶ①
稲垣鉄工(三重)・前編
2021年3月22日号15面

入社後のサポートが奏功
女性含む若手社員が増加

 近年、ファブ業界で女性社員の姿を見かけることが増えた。

 女性が活躍している企業では、どのような取り組みに力を入れているのか。シリーズ「女性活躍」ではファブ企業の実例を基に、女性の活躍推進に何が必要なのかを考えていきたい。

 今回は女性社員が全社員の3分の1を占める稲垣鉄工(三重県四日市市広永町74、Mグレード)の稲垣法信社長、採用コンサルタントで同社の人事を担う平田世里子氏、坂倉幸穂総務部長に、新入社員のサポートなどについて聞いた。

入社後のサポートが奏功
女性含む若手社員が増加

 近年、ファブ業界で女性社員の姿を見かけることが増えた。

 女性が活躍している企業では、どのような取り組みに力を入れているのか。シリーズ「女性活躍」ではファブ企業の実例を基に、女性の活躍推進に何が必要なのかを考えていきたい。

 今回は女性社員が全社員の3分の1を占める稲垣鉄工(三重県四日市市広永町74、Mグレード)の稲垣法信社長、採用コンサルタントで同社の人事を担う平田世里子氏、坂倉幸穂総務部長に、新入社員のサポートなどについて聞いた。

ー女性社員の増加につながった、採用強化のきっかけは。

 
 

稲垣 当社は工場作業員を中心に社員の高齢化が著しく、会社の10年先の将来を考えると、特に熟練作業者の技術を継承する若い人材の確保が急務となっていた。 そこで、採用コンサルティングの経験を持つ平田世里子氏を招き、採用業務と入社後の社員定着のための教育サポートを任せ、若手人材の確保に乗り出した。

稲垣社長

稲垣社長

ー女性社員の増加につながった、採用強化のきっかけは。

 
 

稲垣 当社は工場作業員を中心に社員の高齢化が著しく、会社の10年先の将来を考えると、特に熟練作業者の技術を継承する若い人材の確保が急務となっていた。 そこで、採用コンサルティングの経験を持つ平田世里子氏を招き、採用業務と入社後の社員定着のための教育サポートを任せ、若手人材の確保に乗り出した。

稲垣社長

稲垣社長

平田氏

平田氏

―採用活動や入社後の教育サポートについて。

 
 

平田 若手の長期戦力化が可能な高卒に的を絞って採用活動を進め、入社後は教育面でのケアに力を入れた。専任の教育係を決め、新入社員と教育係、それぞれに毎月の面談を実施。新入社員には社内での人間関係などで困っていることがないか聞き、教育係には新人教育の悩みを聞くとともに、若い世代に伝わりやすいコミュニケーションの仕方をアドバイスしてきた。
 高卒の新入社員は初めて社会に出たばかりで、何もかもが不安。一方、教育係は卓越した技術力を持ちながら、人に教えるという経験があまりなかった世代が多い。こうした世代同士のコミュニケーションは誤解が生じやすいため、人間関係を構築する初期の段階で、それぞれの考えを相手に分かるよう「通訳」して伝え、誤解を減らしてコミュニケーションが円滑になるよう心掛けている。ほかにもさまざまな取り組みで新入社員を「孤独にさせない」「安心して働けるようにする」ことに力を入れている。

―採用活動や入社後の教育サポートについて。

 
 

平田 若手の長期戦力化が可能な高卒に的を絞って採用活動を進め、入社後は教育面でのケアに力を入れた。専任の教育係を決め、新入社員と教育係、それぞれに毎月の面談を実施。新入社員には社内での人間関係などで困っていることがないか聞き、教育係には新人教育の悩みを聞くとともに、若い世代に伝わりやすいコミュニケーションの仕方をアドバイスしてきた。
 高卒の新入社員は初めて社会に出たばかりで、何もかもが不安。一方、教育係は卓越した技術力を持ちながら、人に教えるという経験があまりなかった世代が多い。こうした世代同士のコミュニケーションは誤解が生じやすいため、人間関係を構築する初期の段階で、それぞれの考えを相手に分かるよう「通訳」して伝え、誤解を減らしてコミュニケーションが円滑になるよう心掛けている。ほかにもさまざまな取り組みで新入社員を「孤独にさせない」「安心して働けるようにする」ことに力を入れている。

平田氏

平田氏

ー新入社員の入社後のサポートがどのようにして女性社員の増加や定着につながったのか。

 

板倉 入社後のサポートなどは当初、あくまで新入社員の定着を狙いとして始めたものだったが、結果的に社員同士のコミュニケーションが増えるきっかけにもなった。そして、コミュニケーションが増えることで勤続年数の長い社員が新入社員と関わり、支えることに意識を向けてくれるようになった。また、忙しい部署を他部署が助けるなど、業務面でも社内で協力し合う場面が増えている。
 こうした変化により、社内の雰囲気が若い世代にとって温かく感じられるようになったことは大きい。新入社員が母校で当社での仕事についてプレゼンし、これを聞いた在校生が当社への応募を決めてくれたこともあった。いずれも女性で、卒業した先輩の話に「こういう会社で働いてみたい」と感じたという。特に女性は、すでに入社している女性社員がいきいきと、楽しそうに働いている様子を見て「働きたい」と感じることが多い。ここ数年で女性が13人にまで増えたのは、ベテランも含めた社員が新人とともに働くことへの意識を変えてくれたことによるもので、非常にうれしく感じている。

坂倉総務部長

坂倉総務部長

ー新入社員の入社後のサポートがどのようにして女性社員の増加や定着につながったのか。

 

板倉 入社後のサポートなどは当初、あくまで新入社員の定着を狙いとして始めたものだったが、結果的に社員同士のコミュニケーションが増えるきっかけにもなった。そして、コミュニケーションが増えることで勤続年数の長い社員が新入社員と関わり、支えることに意識を向けてくれるようになった。また、忙しい部署を他部署が助けるなど、業務面でも社内で協力し合う場面が増えている。
 こうした変化により、社内の雰囲気が若い世代にとって温かく感じられるようになったことは大きい。新入社員が母校で当社での仕事についてプレゼンし、これを聞いた在校生が当社への応募を決めてくれたこともあった。いずれも女性で、卒業した先輩の話に「こういう会社で働いてみたい」と感じたという。特に女性は、すでに入社している女性社員がいきいきと、楽しそうに働いている様子を見て「働きたい」と感じることが多い。ここ数年で女性が13人にまで増えたのは、ベテランも含めた社員が新人とともに働くことへの意識を変えてくれたことによるもので、非常にうれしく感じている。

坂倉総務部長

坂倉総務部長

ー女性社員の増加に伴う女性のキャリア長期化のための課題については。

 

稲垣 現在、女性社員は全社員数の3分の1となり、業務への忠実性、積極性、事前準備の徹底など、その働きぶりを社内全体で感じる機会が増えた。現在、入社している若手社員には、男女問わず、長期にわたって働いてほしいと感じている。そのためには業務を互いにフォローし合えるようにして、体調不良やライフイベントなどによる有給休暇の取得がしやすい体制を作ることがまず大事だろう。いずれにしても、女性だけではなく、どの社員にとっても働きやすく、「今後もずっと働き続けたい」と感じてもらえる社内体制づくりを進めていきたい。

事例に学ぶ①稲垣鉄工(三重)・後編
2021年3月29日号11面

事例に学ぶ①
稲垣鉄工(三重)・後編
2021年3月29日号11面

「雰囲気の良さ」に魅力
休みの取りやすさも重視

 ファブ企業で働く女性社員はどのようなきっかけで入社したのか? また、入社後、働き続けるには何が必要なのか? 前回に続き、今回は実際に稲垣鉄工(Mグレード、稲垣法信社長)で働く若手の女性社員に話を聞いた。

「雰囲気の良さ」に魅力
休みの取りやすさも重視

 ファブ企業で働く女性社員はどのようなきっかけで入社したのか? また、入社後、働き続けるには何が必要なのか? 前回に続き、今回は実際に稲垣鉄工(Mグレード、稲垣法信社長)で働く若手の女性社員に話を聞いた。

下村渚さん(右)と豊田あゆみさん(左)の作業のようす

 2018年4月に入社した下村渚さん=写真右=は商業高校でCADに興味を持ち、同社の求人を見つけたことで見学。「会社の雰囲気の良さを感じた」ことが入社のきっかけだ。  当時、社内のCAD担当にはすでに女性スタッフがいたことから、不安はそれほど大きくなかった。とはいえ、「CAD操作だけでなく、建築知識もゼロからのスタート。鋼材の名称など、覚えることが多すぎた」が、いつでも快く質問に応じ、励ましてくれた教育担当者のおかげで、大変な時期を乗り切った。今では「ようやく仕事の面白さが分かってきた。今後の目標は建方までの工程や時間を意識して作業を進めていくこと。現場から『助かった』と言ってもらえる仕事をしていきたい」と語る。

 19年4月に入社した豊田あゆみさん=写真左=は当初、商業高校卒業後は大学進学を考えていたが、「先に入社した卒業生が学校で自分の仕事内容を紹介するプレゼンがあり、そこで初めて社名を知った。卒業生の話す職場の様子が楽しそうで興味を持ち、応募することにした」という。
 就職後の職場環境については「複数人で業務を共有し、有給休暇が取得しやすいことに魅力を感じている。長期にわたって働き続けるには大切なことだと思う」という。「今後は図面をより理解できるよう、建築の基礎知識をもっと学びたい」と抱負を語っている。

 同社では高校の新卒採用を始めた年から毎年の採用を続けており、ワークシェアも推進。具体的には、ひとつの物件の図面製作に複数名が関わり、誰かが有給休暇を取得する時に他の社員がカバーできるようにしている。こうした取り組みにより、工場製作も含め、みんなで協力して仕事を完結させるという意識が定着してきている。

協力して仕事をする、和気あいあいとした職場に

 同社では高校の新卒採用を始めた年から毎年の採用を続けており、ワークシェアも推進。具体的には、ひとつの物件の図面製作に複数名が関わり、誰かが有給休暇を取得する時に他の社員がカバーできるようにしている。こうした取り組みにより、工場製作も含め、みんなで協力して仕事を完結させるという意識が定着してきている。

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協力して仕事をする、和気あいあいとした職場に

 稲垣社長は「女性が長く働き続けるためには、休みが取りやすい体制を整えることが大事だ。現在、女性社員は13人で、ほとんどが20代のため育児休暇などが必要なケースはないが、将来的にはキャリアの長期化を見据えた制度作りも必要だろう」と語る。

 また、食堂やフィットネス設備など、社内の福利厚生面の充実化も検討中だ。「ここ数年の採用活動で、社員の平均年齢は32歳まで下がった。このため、仕事の後に趣味を通じて社員同士が交流できるコミュニティースペースを作りたい。意欲ある人材が、男女問わず長く働き続けられる、働き続けたいと思う会社を目指していく」としている。

一次加工作業にも女性が活躍

 稲垣社長は「女性が長く働き続けるためには、休みが取りやすい体制を整えることが大事だ。現在、女性社員は13人で、ほとんどが20代のため育児休暇などが必要なケースはないが、将来的にはキャリアの長期化を見据えた制度作りも必要だろう」と語る。

 また、食堂やフィットネス設備など、社内の福利厚生面の充実化も検討中だ。「ここ数年の採用活動で、社員の平均年齢は32歳まで下がった。このため、仕事の後に趣味を通じて社員同士が交流できるコミュニティースペースを作りたい。意欲ある人材が、男女問わず長く働き続けられる、働き続けたいと思う会社を目指していく」としている。

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一次加工作業にも女性が活躍