会長年頭の挨拶
皆様、あけましておめでとうございます。
2023年の新春を迎え、謹んでお慶び申し上げます。皆さん一人ひとりが新しい気持ちで新年を迎えられたことと思います。
昨年6月に全国鐵構工業協会の会長を拝命し、この度、初めての新春を迎えました。本年も引き続き、協会および構成員の皆様の発展のために全力を尽くす覚悟でおりますので、皆様におかれましても、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。
さて、過去を振り返ってみますと、2年前から大きな問題となっている新型コロナウイルス感染症の幾度もの波に直面しながらも、昨年には広くワクチン接種が進んできました。感染防止を心掛けながら経済を回していくという難しい状況は、もうしばらくは続くと考えられますが、協会活動にあたっては常に感染防止に努めながら、構成員の皆様とのできる限りのコミュニケーションの深化に努めていきたいと考えております。
鉄骨業界においては、2022年度上半期の推計鉄骨需要量は233万トンと昨年同期比3.2%の増となりました。現在も、業界では大型物件を中心に堅調に推移しており、2022年度通期では昨年度並みになるのではと考えております。
2023年度以降については先行きの不透明感は払拭できず、中小規模の物件については不安定な状況が継続すると見込まれる一方、大型物件は今後も堅調に発注される見通しであり、鉄骨需要全体としては総じて徐々に回復傾向に向かうものと思っております。
業界を取り巻く状況としては、世界情勢の激変による各方面の物価高騰、それに伴う納期の長期化、人材不足、物流の停滞等、需給環境が世界的に変化しつつあります。また、足元では特に、鋼材や副資材等の価格は本年も高値傾向が継続するものと考えています。
この難しい局面を乗り越えるために、業界として現存する諸課題に着実に対応していく一方で、刻々と変化する状況に的確かつ柔軟に対応し、新たな価値を創造していくことが求められていると考えております。
おかげさまで協会は本年、発足後50周年を迎えます。この1年は、業界のあるべき姿および今後の発展に向けたビジョンを協会として示していくことが重要であると感じております。
協会は本年を、「我々が一丸となって各種課題にスピード感をもって意欲的に取り組む年」と位置付け、昨年に引き続き中期的視点に基づく4点、
1.品質管理体制の維持強化
2.人材の確保と育成
3.需給環境変化への対応
4.近未来を見据えた取り組み
を基軸として事業を進めてまいります。
品質はものづくりの基本であり、その管理体制を維持し強化していくことは、業界の継続的な発展のために欠かすことのできない取り組みです。構成員が製作する鉄骨品質への信頼は、協会設立当初から一貫して取り組んできた工場認定制度・検査制度・技術者認定制度を柱とした継続的な活動の成果です。
協会は将来にわたりこの信頼を守り抜き、社会基盤を支えている業界としての責務を果たしてまいります。
(1)品質管理体制の維持
(2)品質管理体制の強化と資格取得支援
(3)高規格材鉄骨製作支援制度の推進
少子高齢化の進展等に伴い、近年、鉄骨業界を担う人材の確保と育成が喫緊の課題となっています。協会はこの数年間、資格取得促進・支援活動、社内教育・雇用促進のための各媒体の作成・配布、各種研修、業界広報ポスターの作成等、様々な施策を実施してきました。
今後とも協会は人材の確保と育成について施策内容の一層の充実を図り、実効性を高めてまいります。
(1)人材確保施策の強化
鉄骨業界に携わるより多くの人材を確保するためには、鉄骨製作に携わる人々の更なる地位向上を図るとともに、鉄骨業界が世の中になくてはならない働き甲斐のある職種であることを社会に浸透させていく必要があります。本年は協会がこれまで行ってきた様々な取り組みを強化し、映像コンテンツ等を用いて実効性を高めていきます。
また、従業員の定着率向上をめざし、従業員が仕事にやりがいを感じ、人が育ち、継続して人材がつながっていくよう検討を進めるとともに、多様な人材の力を結集して業界の継続的な発展を図るため、女性、高齢者、外国人材の活躍を促してまいります。
(2)人材育成施策の強化
人材確保施策の強化と併行し、協会を挙げて人材育成施策にも幅広く取り組んでいこうと考えており、今までの教育体系および研修体系について、今一度、それらを俯瞰し、強化すべき分野や重点的な課題を新たな視点で見直してまいります。
また特に今般、経営者層に求められるスキルが広範化してきていることから、次の時代の経営を担っていくためには何が必要なのかを探求し、効果的な研修を実施していきます。
一方、多様性に富む人材の育成を多角的に進めて行くために、青年部会との連携を強化してまいります。
人材の育成が構成員の事業の発展に繋がり、その結果、それが業界全体の継続的な成長に貢献するものと信じ、粘り強く取り組みを行ってまいります。
昨年は世界情勢の激変による各方面の物価高騰、それに伴う納期の長期化、物流の停滞等に直面し、今般、それらに伴って需給環境が世界的に変化しつつあり、かつ、これは一過性の問題ではなくなってきたと考えています。協会はこうした需給環境の変化に対して、状況に合わせて迅速かつ適切に対応してまいります。
(1)物価高騰、納期長期化に対する取り組み
一昨年来の大きな問題である鋼材や副資材等の価格は、世界情勢の激変により本年も高値傾向が継続するものと考えています。また、納期の長期化についても一過性の問題として看過することができない状況です。
このうねりは業界の努力だけで解決できる問題ではありません。
このような状況では、業界として最大限の情報を集めて分析し、多くの関係先と協力して連携を進めていくことが必要です。
引き続きこの問題への対応を図るため、協会の総力を挙げて鉄鋼メーカー等のサプライヤーとの情報交換を密にするとともに、行政、建築業界関係者とも対話を重ねて状況の打開に向けた取り組みを強化し、併せて効果的な情報発信、情報共有を行ってまいります。
(2)原価管理の確実な実施に向けた支援
このような先行きが不透明な環境の中でこそ、自社工場の原価と採算レベルを的確に把握し、日常の事業活動に生かすことが非常に重要です。協会は以前から原価管理の徹底と強化について様々な施策を実施してきており、本年も引き続き、それらの確実な実施に向けた支援を進めてまいります。
業界の継続的な発展のためには中期課題への取り組みにとどまらず、業界が進むべき近未来の方向性を的確に見定めることが必要であると考えています。
産業活動を下支えするデジタル化等の動向、世界共通の長期目標であるカーボンニュートラルへの取り組み、エネルギー問題等の環境問題にも注視し、新しい産業構造や新技術にも対応できるよう、柔軟な行動力を備えておくことも必要です。
協会は、これらの中期課題に具体的かつ柔軟に取り組み、かつ、近未来を見据えた業界の将来ビジョンを策定してまいります。
(1)デジタル化への対応
コロナ禍をきっかけとして既に社会に定着しつつあるウェブ会議やオンデマンドでの講習会について、協会も積極的に対応してきました。
日報のデジタル化、リモートでの製品検査等、既に検討段階から実行段階に移行したものがあり、協会は、構成員がそれらを活用する際の支援を引き続き行ってまいります。
また、CADによる各種の効率化および省力化を更に推進するための検討を進めてまいります。
(2)環境問題に対する取り組み
全世界レベルで環境負荷に対する関心が高まる中、鉄骨製造業界としても環境問題に取り組むことが必要であると考えています。特に、カーボンニュートラルを見据えた温室効果ガス排出量の削減やエネルギー問題については、避けては通れない課題となってきております。
また、新たな化学物質規制の導入等、労働環境に対する規制も厳しくなりつつあり、作業者の健康に配慮した衛生管理手法にも一層の高度化が求められています。
協会は、それらに関する今後の行政の動向を注視しつつ、具体的な検討を進めてまいります。
(3)業界の将来ビジョンについて
業界の将来の更なる発展のためには持続的な成長が必要であり、我々が立ち止まることがあってはなりません。
一方、業界およびその周辺には、従来型の発想ではもはや解決の難しい様々な課題も山積し、それらに正面から向き合うためには、これまで鉄骨業界の礎を築いてこられた諸先輩はもちろん、柔軟性に長けた方々と一体となっての力の結集と発揮が必要です。
業界全体が一丸となって時代の変化に機敏に対応し、次の50年も発展できるよう、皆で力を合わせてまいりましょう。
この一年が皆様にとって明るく実り多き年になりますよう祈念し、新年のご挨拶といたします。
以 上